対談記事(7):ユニアデックス株式会社(BIPROGYグループ。Microsoftの認定パートナー)から、ChatGPTなどの生成AIに関するビジネスの現状と今後のビジネスの展開をお伺いしました(1/2)


対談の概要:多くの会社がChatGPTなどの生成AIの導入を検討しており、他社の動向やIT企業のサービスの内容が気になるところと思います。そこで、多くの会社に対してソリューションを提供している、ユニアデックス株式会社から、ChatGPTなどの生成AIに関するビジネスの現状と今後のビジネスの展開をお伺いしました。Windows95やクラウドコンピューティング以来の需要の高さとのことであり、読者の関心事である他社の動向やサービスの内容をお伝えいたします。

ユニアデックス株式会社(野津原・藤田)、工学博士(前)、弁護士(松岡)が対談

1 ユニアデックスについて

松岡:最初にユニアデックス様のビジネスについてご紹介をお願いします。

野津原:当社は、ネットワーク、サーバー、ストレージソリューション、保守・運用、クラウド、セキュリティ、そして幅広い業界のお客さまのICTインフラ(情報基盤)を構築し、豊かな社会の創造に貢献しています。
 AIにつきましては、従前より、「AI画像検査」、「自然言語処理 NLP/NLU」(AIチャットボットや顧客の声の分析サービス)、「AI予測」のサービスを提供しています。

2 Windows95やクラウドコンピューティング以来の需要の高さ

松岡:現在、ChatGPTは、メディアでも大きく報道されています。ただ、ディープラーニングのときのように一時的なブームで収束するのではないかという意見もありますが、いかがでしょうか?

野津原:ディープラーニングの時とは全然違います。あの時は、AIの関係者やメディアだけが盛り上がっていたのであって、多くの企業が製品・サービスを発注する状況ではありませんでした。これに対して、今回のGPTの場合、多くの企業から「提供予定はないのか?」、「ChatGPTをうまく使ったサービスを考えていないのか?」と積極的にGPTについて問い合わせがあります。AIのお話をしているお客様の内、少なくとも3~4割は、こちらから何も言わなくとも、お客様から問い合わせがあるのです。また、残りのお客様も非常に高い関心があります。

松岡:お客様から積極的に問い合わせがあるというのは珍しいのでしょうか?

野津原:ChatGPTのリリース以前においては、お客様から積極的にAI製品について問い合わせがあるということはなかったのです。

前:そうですよね。ディープラーニングに関しては、システムに詳しくない人が直接触ることができるものではないかもしれませんが、GPTの場合、直接触ることができますから、違ってきますね。

松岡:過去にこのようなことはあったのでしょうか?

野津原:30年以上IT業界にいますが、このような盛り上がりは、Windows95やクラウドコンピューティング以来だと思います。

松岡:そこまでの盛り上がりなのですね。それは、いつ頃からでしょうか?

野津原:我々の業界としては、昨年11月30日にChatGPTがリリースされて、翌日から何件か問い合わせはありました。お客様の声が多く聞こえ始めたのは、今年1月の1週目からですね。

松岡:分かりました。この盛り上がりは、いつ頃まで続くと予想されていますか?

野津原:個人的には、少なくとも1年は続くと思っています。もしGPTの回答の正確性が改善されれば、4~5年は続くと思いますね。藤田さんはどう思いますか?

藤田:私も、少なくとも1年は続くと確信しています。1年の後は、野津原さんご指摘のような回答の正確性の改善の点もありますが、今後の国の規制にもよるのかなと考えています。現在は、OpenAIのCEOが岸田首相や自民党を訪問したこともあり、日本としては非常にウェルカムな状態ですが、もうすぐG7もありますし、年度内には規制の方向性が見えてくるのかなと予想しています。

野津原:そうですね。他国では、生成AIを規制する動きもありますからね。

前:イタリアなどの国において特に問題視されている問題点については、継続的に改善されながら、生成AI自体は定着していくのだろうなと考えています。

野津原:そうですね。お客様の中には、不正確な回答をするなど、生成AIの基本的な特性をご存知でない方もいらっしゃいますが、この認識は少し時間が経過すれば減っていくと思います。

3 日本マイクロソフトとのパートナーシップ・Microsoft製品の提供について

(1)認定パートナーとして

松岡:貴社と日本マイクロソフトとのパートナーシップがあるというお話はお伺いしております。このパートナーシップについて分かりやすく教えてください。

野津原:当社は、BIPROGYグループとして包括的な契約の中で、日本マイクロソフトとの強力なアライアンスの下、長年にわたって、様々な業種のお客さまの課題に対してソリューションを提供してきました。その実績とノウハウを活かして、信頼できるSI(System Integration)サービスを実現しています。
 BIPROGYはマイクロソフト ジャパン パートナー オブ ザ イヤー 2022において「Azure Analyticsアワード」を受賞しました。マイクロソフト ジャパン パートナー オブ ザ イヤーの受賞は、2020年度の「Retailアワード」、2021年度の「Financial Services アワード」に続き、3年連続となります。
 多くの方は、Microsoft製品というと、OfficeなどのWindows製品をイメージすると思いますが、法人に提供するMicrosoft製品には、サーバーソリューションやクラウドソリューションがあります。
 企業がMicrosoft製品を購入した場合、すぐに十分に利用することは難しいものです。そこで、当社は、その企業が十分にそのMicrosoft製品を利用できるようなシステムを作り、保守・運用をするサービスを提供しています。つまり、システムインテグレーションを提供し、サポート業務を行っています。

松岡:他のパートナーとは、何が違うのでしょうか?

野津原:BIPROGYグループはマイクロソフト認定の「ライセンシング ソリューション パートナー (Licensing Solution Partner :LSP)」であり、スムーズな契約締結に関する援助、技術サポート、ライセンス購入手配など、企業の方々が簡単にライセンスを導入し使用するためのサービスを提供可能です。また、各種認定も取得しているためより高度で専門的なソリューションをご提供することが可能です。

松岡:生成AIを組み込んだMicrosoft製品についても、貴社において同様に提供可能ですか?

野津原:はい。Microsoftが新しくリリースした「Azure OpenAI[1]」やリリース予定の「Microsoft 365 Copilot[2]」(以下Copilot)などの生成AIを組み込んだ製品についても、企業が購入してもすぐに十分に利用できるようになるわけではありません。これらの生成AIを組み込んだ製品についても、利用環境の構築や利用方法の説明など、当社がお客様をサポートすることができるように準備を開始しています。

(2)Azure OpenAIについて

松岡:Azure OpenAIは既にリリースされていますが、どのような製品なのでしょうか。

野津原:Azure OpenAIは、MicrosoftのAzureにおいて、ChatGPTのような生成AIを利用することができるというAzureの中にあるサービスです。現在、GPT4以前のバージョンが実装されています。

松岡:GPT4は、実装されないんですね?

野津原:GPT4については利用申請が必要となりますが、現在、申請が殺到しており、順番に処理をしているそうです。

前:GPT4のAPIは、Waiting Listに入り、待たなければならない状態と思いますが、それと同じ状態ですか?

野津原:その通りです。既に申請を受け付けたものを処理していっている状態のようですね。

松岡:貴社がAzure Open AIを提供する場合、どのような業務をされるのでしょうか?

野津原:Azure Open AIもAzure環境が必要になりますので、未導入のお客様にはAzureの契約/設計/導入サービスを提供致します。AzureOpenAIの用途により、必要に応じたプロンプトエンジニアリングの支援や、個別のアーキテクチャーの設計構築などを行います。具体的には、ChatGPTは不正確な回答をすることがありますが、これを一定程度防ぐための対策を施したり、企業データを利用するためのデータ連携なども提供します。

松岡:プロンプトエンジニアリングは、最近よく聞くことばですね。分かりやすくご説明をお願いします。

野津原:プロンプトエンジニアリングは、人工知能、特に自然言語処理における概念の一つです。プロンプトエンジニアリングでは、AIが実行すべきタスクの説明を、暗黙のうちに与えるのではなく、質問などとして入力に組み込みます。

(3)Copilotについて

松岡:ありがとうございます。個人的には、Copilotを利用できることを待ち遠しく思っています。

野津原:Copilotは、画期的な製品となりそうですね。ただ、Copilotについてもお客様が購入後すぐに十分に利用できることにはならないのではないかと考えております。そこで、Copilotにつきましても、お客様がどのように利用したいのかということを読み取って、トータルサポートを提供することとなると思います。Copilotはまだリリース前であるためあくまで予想の話になりますが、例えば、「関数を組み込んで表を作って」という一連の流れを組み込んでおいて、ボタン一つで意図した結果を表示するように動くというプロンプトやライブラリのようなものを提供したいと考えています。また、利用方法を分かりやすく説明することが必要となると考えています。

松岡:Microsoftは、直接製品を販売すると誤解していましたが、法人向けの提供については、Microsoft自身ではなく、パートナー企業が行うということなんですね?

野津原:一部の会社向けにはMicrosoft自身がハイタッチとして担当していることもあるようですが、原則としては、パートナー企業が提供していると思います。

4 Azureのセキュリティを求める企業

松岡:お客様の立場からすれば、ChatGPTやGPT4を利用するか、MicrosoftのAzureを利用するか、選択肢があると思いますが、どちらが選択されていますか?

野津原:OpenAIのGPTをそのまま使うというお客様は、IT企業を除いて今のところ見当たりません。ほとんどのお客様は、MicrosoftのAzure OpenAIで生成AIそのものを単独で使ってみたいという形か、社内ドキュメントの活用という形を希望しています。これは、Azureにおいて、既に提供している各種機能を使ってお客様の希望する用途に合わせたアーキテクチャーが組みやすいこととセキュリティの高さからです。
 一方で次々にリリースされる予定のGoogle、AWSの大手が提供するサービスや、GPTを使った新しいサービスを注視しているお客様もいる状況です。

前:「セキュリティの高さ」というのは、OpenAIのGPTを利用して機密情報を入力すると、それを学習に使われるかもしれないけど、Azureを利用すると、プライベートクラウド(自社で閉じたクラウド)なので、学習に使われることはないという意味ですよね。

野津原:ご指摘の通りですね。正確ではありませんが、分かりやすくいうと、Microsoftは、GPTのコピーを有しており、それを利用していますので、学習の対象となるデータセットには含まれないこととなります。これが、申し込み殺到の理由です。
 また、Azure契約ユーザーであれば、申請をするだけでAzureのセキュリティを利用しながらGPT-4を使うことができることも大きな理由だと思います。

前:現在、個人情報・機密情報をGPTに入力する場合の問題がクローズアップされていますが、この問題に対する解決策としては、このAzureの利用となるということでしょうか?

野津原:はい。他のLLMやGPTを使ったサービスでもAI学習に企業情報を利用しないものがありますので、そちらでも大丈夫だとは思いますが、一般的な企業が求めるレベルのセキュリティのニーズは、MicrosoftのAzureを利用すれば、その点は比較的簡単に解決できると思います。

(この対談記事は次回に続きます)

2023年4月



[1] Azure Open AI Service – 高度な生成モデル | Microsoft Azure
[2] Microsoft 365 Copilot を発表 – 仕事の副操縦士 – News Center Japan 


【過去の対談記事】
対談記事(1):ChatGPTのビジネスの利用について、工学博士と弁護士が対談
対談記事(2):ChatGPT・GPT4の利用とセキュリティなどの問題点について、工学博士と弁護士・弁理士が対談
対談記事(3):対談記事(3):ChatGPTのプラグイン、Midjourneyなどの画像生成AIによる生産性向上
対談記事(4):Midjourneyなどの画像生成AIによる著作権の問題
対談記事(5):イタリアにおけるChatGPTの一時的な利用禁止と各国データ保護機関の動向
対談記事(6):AIと特許・AIによる特許に関する業務の効率化

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対談者ご紹介

 

ユニアデックス株式会社 マーケティング本部 ビジネス企画開発部 担当部長
野津原壮夫(のづはらたけお)

大手商社にて二十数年勤務後にスタートアップを起業。2018 年よりユニアデックスに入社し、DX やAI を活用したデータ関連ビジネスの企画・推進に従事している。


 

ユニアデックス株式会社 技術戦略本部 デジタルイノベーション部 担当部長
藤田勝貫(ふじたまさつぐ)

IT 企業にてシステムエンジニア、IT ベンチャー起業を経て、2005 年より現職。DX や AI を活用したデータ関連ビジネスの推進に従事している。


ジャパンマネジメントシステムズ株式会社 代表取締役社長
AIB協会理事 前一樹(まえ かずき)

東京大学大学院工学系研究科博士課程終了・博士(工学)取得。ベルギー・ルーベンカトリック大学研究員、北陸先端科学技術大学院大学助手、ITベンチャー企業取締役、CTOなどを経て、現職。医療系研究会事務局長、元上場企業監査役なども務める。情報処理安全確保支援士(登録番号第002063号)、ITストラテジスト。


  

渥美坂井法律事務所・外国法共同事業 パートナー 弁護士 
AIB協会理事 松岡史朗(まつおか ふみあき)

京都大学法学部卒業。
上記の役職の他、一般社団法人日本DPO協会顧問、ステート・ストリート信託銀行株式会社社外取締役(監査等委員)も務める。



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