対談記事(1):ChatGPTのビジネスの利用について、工学博士と弁護士が対談

 ChatGPTのビジネスの利用について、工学博士と弁護士が対談しました。企業のご担当者の皆様・起業家の方々に読んでいただきたいと考えております。
 この対談記事は連載をいたします。

1.ChatGPTと他のAI

松岡:ChatGPTを使ってみましたが、自然に会話できることに驚きました。別の対話AIより、格段に自然に会話ができると感じています。ChatGPTは、なぜそのようなことが可能なのでしょうか。

前:はい。これまでのチャットボットなどと比べて自然な文章で答えてくれるのがChatGPTの特長です。初期の学習段階で自然で適切な回答を返すように人がフィードバックして学習させていること、膨大なパラメータをインターネット上のテキストなど大量のデータを用いて学習させていることで、質問に対し、会話のように自然な回答をすることができるようになっています。ChatGPTは今突然現れたものではなく、前身のGPT-1、GPT-2、GPT-3、InstructGPTと徐々に改良されてきたものです。

松岡:ChatGPTは、Open AIというアメリカの会社が開発しました。日本人としては、日本企業にも生成AIを開発してほしいと思いますが、難しいのでしょうか。

前:ChatGPTに限りませんが、一般にAIは、できるだけ多くのデータ、たくさんの人に使用してもらうことによって精度が上がります。先にできるだけ多くの人に使ってもらって、多くのフィードバックをもらったアプリが、より成長してどんどん優位になる傾向があります。実際、今回のChatGPTの公開も広くユーザーのフィードバックをもらって課題を解決することとされています。Googleなど、他の企業も大規模言語モデルの会話AIを開発していますが、今回ChatGPTのリリースが世界中で話題になり、爆発的にユーザーを増やしたのは、ある意味優位に立つための戦略が上手く行ったと言えるかもしれません。すでに競争できるレベルのものがあれば別ですが、全くの後発でこれに追いつくというのは、現実的には難しいかもしれません。

松岡:日本企業としては、ChatGPTを利用することを前提としたサービスを検討する方が現実的なのかもしれませんね。

2.ChatGPTの具体的な利用

松岡:先日、料理をする機会がありましたので、実際に、ChatGPTで親子丼のレシピを聞いてみましたが、別の有名レシピサイトの方が、分かりやすく、優れていたと思います。また、ChatGPTに「レシピのURLを教えて」と言っても、古くなり使用できなくなったURLしか教えてもらえませんでした。なぜ、このような現象が起こるのでしょうか。

前:まず、ChatGPTは、現時点では、インターネット検索とは連動させていません。また、2021年までのデータで学習させたものです。ですので、例えば、有名レシピサイトの過去のURLをChatGPTが学習していれば、ChatGPTは、その過去の内容を回答することとなります。ChatGPTは自然な言葉で回答するという意味では非常に高いレベルに達していると思いますが、正確ではない内容を含んでいることがままあります。今後、ユーザーのフィードバックにより学習していくことで回答内容の正確性も高くなることが期待されます。AIではありませんが、Wikipediaの初期の頃と同じ感じと理解すると良いかもしれません。Wikipediaも多くの人が編集することで内容の正確性が上がったり、不適切な内容は出てこなくなりました。ChatGPTは、現時点では、回答内容の正確性より、自然な会話ができるということに重点が置かれたものといえます。

松岡:そうすると、週末のおすすめのレストランなどはChatGPTに聞かず、検索した方がよいのかもしれませんね。

前:ChatGPTに聞くと、現在では存在しなくなったお店や全く違うお店を案内されることがあると思いますよ。

3.ChatGPTを利用したビジネス

松岡:ChatGPTを利用したビジネスは、どのようなものが考えられますか?現時点では、まだ法律業務に利用できるということではないのかなと感じています。

前:ChatGPTの回答内容の正確性は、現時点では十分高いとは言えませんので、法律業務や医療・医薬品のような間違えが許容されない領域において利用するのはまだ危険と思います。そのようなサービスにおいてChatGPTを利用するのであれば、相当慎重な設計が必要でしょう。
ChatGPTは、①英語、日本語だけではなく、多言語で自然なコミュニケーションが可能であり、②少子化対策など一義的な回答が存在せず、回答のために最新のデータが不要な質問に向いているように思います。現時点では、ざっくりと要点をつかむ用途に使うのが向いていると思います。

松岡:観光業はいかがでしょうか。例えば、神社や旅館などにおいて、ChatGPTを組み込んだチャットボットが表示される端末を提供すれば、英語、スペイン語、中国語など多言語で、その神社や旅館、その地域の歴史などを案内することが可能になるように思います。

前:いいかもしれませんね。年代などに少し間違いがあるかもしれませんが、注意書きなどをしておけば、利用者は許してくれるかもしれません。

松岡:ゆるキャラをチャットボット上で話させれば、歴史を少し間違っても許してくれそうな気がします。

前:そうかもしれませんね。
占いみたいなものはいいかもしれません。

松岡:そうですね。面白いチャットサービスとなりそうです。

前:ChatGPTに関する法律問題としては、どのような問題がありますか。

松岡:もちろん、著作権をはじめとした法律問題は生じ得ますが、もう少し具体的なサービスが始まったところで説明していきたいと思います。

2023年3月

対談者ご紹介

ジャパンマネジメントシステムズ株式会社 代表取締役社長
AIB協会理事 前一樹(まえ かずき)

東京大学大学院工学系研究科博士課程終了・博士(工学)取得。ベルギー・ルーベンカトリック大学研究員、北陸先端科学技術大学院大学助手、ITベンチャー企業取締役、CTOなどを経て、現職。医療系研究会事務局長、元上場企業監査役なども務める。情報処理安全確保支援士(登録番号第002063号)、ITストラテジスト。


  

渥美坂井法律事務所・外国法共同事業 パートナー 弁護士 
AIB協会理事 松岡史朗(まつおか ふみあき)

京都大学法学部卒業。
上記の役職の他、一般社団法人日本DPO協会顧問、ステート・ストリート信託銀行株式会社社外取締役(監査等委員)も務める。
https://www.aplawjapan.com/professionals/fumiaki-matsuoka

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人工知能ビジネス創出協会 事務局

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